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あふれださない

ガス・ヴァン・サントの映画をみると、いつも「寸止めかいな!」とツッコミをいれたくなる。
何が寸止めかというと、彼の映画は、いつも、ぐっと感情が高ぶって、あふれだす、その一歩手前で、終わってしまうのだ。
静かに高ぶって、気づいたらすっと終わっている。
泣きそうで泣かない。感動しちゃいそうで感動しない。「感動した!」とか、「素晴らしい映画だった!」とか、感想を一言では言えないようなつくりになっているのだ。

 

ガス・ヴァン・サントの映画をみたときと同じようなものを、白波多カミンの音楽にも感じる。

 

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仏壇の前でセックスをしたと告白する曲があったり、インタビューで「レズったことがある」と言ってみたり、白波多カミンその人はこちらが少し怯んでしまいそうになるほどの強さを持っていて、歌やステージからも、その強さが伝わってくる。
Youtubeでライブ映像をみてみると、歌っているときの目の鋭さに驚く。
彼女は、本気だ。女性シンガーソングライターというのは、だいたいみんな、強くて、本気だけど、それにしても彼女は本気だ。

 

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透明感があって、それでいて、少しひりひりするような歌声で、彼女は何気ない言葉を突き刺す。水中での息苦しさと愛する人に対しての苦しさが重なる、「バタフライ」。
バンド編成になって、音の厚さが増して、より情感的になった。聴いていると、自分の中に高ぶりを感じる。
しかし、「感動した!」「苦しい!」と一言では言えないような、もやっとしたものがある。一瞬、なんだこれは、と、立ち止まって考える。
彼女の言葉と歌声は、心のなかに、まっすぐに、一直線でやってくるから、脳に到達するのに、時間がかかるのだ。「ああ、言葉が突き刺さっていたのか」と、後になって、もやっとしたものの正体に気づく。
派手に心震わせる音楽ではないけれど、一瞬、はっとするような、静かな美しさと強さを持った音楽だと思う。